凱旋門賞と日本競馬――終わらない挑戦を考える
「日本最強馬」を連れていけば
凱旋門賞を勝てるのか?
オルフェーヴル以降も届かない
“適性”という壁
また今年も、日本競馬の長い夢はかなわなかった。
2026年10月4日、フランス・パリロンシャン競馬場で行われた凱旋門賞。日本から挑んだアドマイヤテラは11着、メイショウタバルは14着。勝ったのは前年の覇者ダリズで、2分27秒11のタイムで連覇を達成した。
レース後、アドマイヤテラ陣営から聞かれたのは「能力が足りなかった」という単純な言葉ではなかった。友道康夫調教師、C.デムーロ騎手ともに、スローペースからゴール前の速い脚を求められたことに触れ、ワンペースで長く脚を使う同馬には、もう少し流れてほしかったという趣旨の見解を示している。
ここに、凱旋門賞を考えるうえで非常に重要なヒントがある。
日本で強い馬を連れていけば、凱旋門賞でも強い――本当にそうなのだろうか。
日本ダービー、ジャパンカップ、天皇賞、宝塚記念、有馬記念。日本には世界最高水準の競走があり、日本馬は世界各地のGⅠでも結果を残してきた。それでも凱旋門賞だけは、1969年のスピードシンボリによる最初の挑戦から半世紀以上が経った現在も勝てていない。2026年大会前までに延べ38頭が挑戦し、最高はエルコンドルパサー、ナカヤマフェスタ、オルフェーヴルによる2着だった。
ならば、そろそろ問いそのものを変えてみてもいいのではないか。
「日本で一番強い馬は誰か」ではない。
「ロンシャンで最も強く走れる日本馬とは、どんな馬なのか」。
今回はこの視点から、日本馬がいまだ越えられない凱旋門賞という壁の正体を考えてみたい。
目次
- 今年も届かなかった凱旋門賞
- 日本馬は本当に「世界で弱い」のか
- 同じ芝2400mでも東京とロンシャンは別物
- 最大高低差10m――まずコースそのものが違う
- 日本馬を苦しめる「芝」の違い
- 速い時計で走れることと、凱旋門賞で強いことは同じではない
- エルコンドルパサー――半年かけて欧州仕様へ
- ナカヤマフェスタ――「日本最強」ではなかった馬が2着
- オルフェーヴル――日本最強級でも届かなかった
- スルーセブンシーズが示した別のヒント
- ビザンチンドリーム5着が教えたこと
- 2026年アドマイヤテラの敗戦から見えるもの
- 「道悪に強い馬」を連れていけばいいのか
- 血統だけで“欧州適性”は判断できるのか
- 斤量――3歳馬という選択肢
- 現地前哨戦は本当に必要なのか
- 長期滞在か直行か――正解が一つではない難しさ
- もし「凱旋門賞専用馬」を作るなら
- 日本最強馬ではなく「ロンシャン最強馬」を探す
- 凱旋門賞を勝つ日は本当に来るのか
1.今年も届かなかった凱旋門賞
2026年の凱旋門賞には、日本からアドマイヤテラとメイショウタバルの2頭が出走した。
結果はアドマイヤテラ11着、メイショウタバル14着。勝ったダリズから見れば、今年も日本馬は上位争いへ加わることができなかった。
数字だけを見れば「惨敗」と表現したくなる結果だろう。
しかし、凱旋門賞における日本馬の歴史を考えるとき、着順だけを並べても問題の本質は見えてこない。
これまで日本は、さまざまなタイプの馬を送り込んできた。クラシックホース、グランプリホース、長距離GⅠの勝ち馬、日本ダービー馬、逃げ馬、差し馬、3歳馬、古馬。日本競馬を代表する存在が、何度もロンシャンへ向かった。
それでも勝てない。
これだけ違うタイプの名馬が挑戦しても勝てないのなら、
問題は単純な「能力不足」ではないのではないか。
そこから今回の話は始まる。
2.日本馬は本当に「世界で弱い」のか
凱旋門賞が終わるたびに聞かれるのが、「やはり日本馬は欧州の一流馬にはかなわない」という意見だ。
しかし、この説明だけでは現在の競馬をうまく説明できない。
日本調教馬の海外遠征は、もはや「参加すること自体が挑戦」という時代ではない。香港、中東、アメリカ、オーストラリアなど、さまざまな地域の国際競走へ遠征し、世界の有力馬と戦うことが日常的になった。
それなのに凱旋門賞だけは、1969年から挑戦を重ねても勝てない。日本馬は何度も頂点に迫りながら、最後の一線を越えられずにいる。
この事実から見えてくるのは、「日本馬が世界で通用しない」という話ではなく、むしろ凱旋門賞という競走が、日本競馬とは異なる能力を強く要求している可能性である。
そこで最初に見なければならないのが、舞台そのものだ。
3.同じ芝2400mでも東京とロンシャンは別物
日本競馬で「2400mの王道」と言えば、東京芝2400mを思い浮かべる人が多いだろう。日本ダービーとジャパンカップが行われる舞台である。
そして凱旋門賞も2400m。数字だけなら同じだ。
ところが、実際の競技として見ると両者は驚くほど違う。
パリロンシャンの2400mコースは、スタート後しばらくすると上りへ入り、その後は下りへ転じる。さらに「フォルスストレート」と呼ばれる偽りの直線を通過してから、本当の直線へ入る。
最後の直線は約533m。東京競馬場の直線と長さだけを比較すれば大きくは違わない。
しかし、そこへ到達するまでに馬が経験する2400mの中身がまるで違うのである。
4.最大高低差10m――まずコースそのものが違う
パリロンシャンの2400mコースを理解するうえで象徴的なのが、高低差だ。
コースの最大高低差は10m。JRAの競馬場でも起伏が大きい中山競馬場の高低差5.3mと比べても、その大きさが分かる。
しかも単純に「坂を一度上って終わり」ではない。
上りながらポジションを取り、下りではスピードとバランスを保ち、フォルスストレートで仕掛けを待ち、本当の直線へ入ってからもう一度脚を使う。
ロンシャン2400mで求められるもの
・上り坂でもリズムを崩さないこと
・下り坂で力まず走れること
・馬群の中で折り合えること
・仕掛けを待てること
・直線でもう一度加速できること
・馬場が悪化しても走りを維持できること
単純な最高速度ではなく、地形の変化の中でエネルギーをどう配分するか。それ自体が一つの適性なのである。
5.日本馬を苦しめる「芝」の違い
凱旋門賞を語る際、必ず出てくるのが馬場の違いだ。
日本の芝競馬、とりわけ東京や阪神などの良馬場では、高速決着になることが珍しくない。軽快なスピードを維持し、最後にはさらに速い脚を繰り出す能力が重要になる。
一方、秋のフランスは天候次第で馬場状態が大きく変化する。
パリロンシャン2400mのコースレコードは、2011年の凱旋門賞でデインドリームが記録した2分24秒49。一方、極端に時計を要する年には2分30秒を大きく超える決着もある。
重要なのは時計そのものではない。
馬が地面から受ける反力も、脚の抜け方も、疲労の仕方も変わる。
日本の高速馬場で極めて効率よく走れることが、そのままロンシャンでの効率の良い走りにつながるとは限らない。
6.速い時計で走れることと、凱旋門賞で強いことは同じではない
日本競馬では、速い時計を持つ馬が高く評価されることがある。もちろん、それ自体は重要な能力だ。
しかし、競走馬の強さは最高速度だけで決まらない。
硬めの高速馬場でストライドを伸ばし続ける能力と、起伏のある柔らかな芝でバランスを維持しながら長く脚を使う能力は、似ているようで違う。
100m走の世界最速選手が、そのままクロスカントリーでも世界最強になるわけではない。それぞれの競技には、それぞれに適した身体能力と技術がある。
競馬でも同じだ。「2400mを誰より速く走った馬」ではなく、「ロンシャンという2400mを最も効率よく走れる馬」を探さなければならない。
7.エルコンドルパサー――半年かけて欧州仕様へ
日本馬の凱旋門賞挑戦を語るうえで、今なお特別な存在なのが1999年のエルコンドルパサーだ。
結果は2着。
しかし重要なのは着順だけではない。
エルコンドルパサーの挑戦は、「日本から直前に遠征して凱旋門賞を走る」というものではなかった。春から欧州へ渡り、フランスを拠点としてイスパーン賞、サンクルー大賞、フォワ賞を戦い、本番へ向かった。
陣営は日本で完成した競走馬をそのまま持ち込むのではなく、欧州の環境の中で実戦を重ねながら凱旋門賞へ近づいていったのである。
それでもモンジューに敗れた。
ただ、この2着は現在まで日本馬の最高着順であり、後のナカヤマフェスタ、オルフェーヴルと並ぶ到達点となっている。
8.ナカヤマフェスタ――「日本最強」ではなかった馬が2着
凱旋門賞と「適性」を考えるとき、非常に興味深い存在がナカヤマフェスタである。
2010年の凱旋門賞で2着。勝ったワークフォースに最後まで迫った。
もちろん宝塚記念を制したGⅠ馬であり、能力が高かったことに疑いはない。
しかし、凱旋門賞挑戦前の国内実績だけを基準に「歴代日本最強クラス」と評価されていた馬ではなかった。
それでも凱旋門賞では、日本でさらに華々しい実績を持つ多くの馬を上回る結果を残した。
この事実だけでも、「日本での実績順位=凱旋門賞での適性順位」ではないことが分かる。
凱旋門賞攻略を考えるなら、ナカヤマフェスタの2着を単なる偶然として片付けず、「なぜこの馬はロンシャンで能力を発揮できたのか」と考えることに価値がある。
9.オルフェーヴル――日本最強級でも届かなかった
そして、日本競馬が凱旋門賞に最も近づいた象徴として語られるのがオルフェーヴルだ。
2012年、2着。
2013年も、2着。
日本三冠馬であり、宝塚記念、有馬記念なども制した歴史的名馬が、二度挑んでも勝てなかった。
特に2012年は直線で先頭へ抜け出し、日本競馬の悲願が現実になったかと思わせる場面まであった。しかし最後にソレミアの逆転を許した。
ここから「日本馬には無理だ」と結論づけることもできる。しかし逆の見方もできる。
オルフェーヴルは、日本で歴史的な強さを示した馬が、欧州の芝でも世界最高峰と互角以上に戦えることを証明した。
つまり壁は絶対的なものではない。ただ同時に、日本最強級の能力だけでも最後の一線を越えられないことがあるという現実も示したのである。
10.スルーセブンシーズが示した別のヒント
2023年には、スルーセブンシーズが4着に入った。
この馬もまた、凱旋門賞挑戦時点で「日本で最も実績のある現役馬」と単純に表現できる存在ではなかった。
同年の宝塚記念ではイクイノックスにクビ差まで迫る2着。そこで見せた能力を携えてフランスへ向かい、ロンシャンでも世界の有力馬を相手に4着へ食い込んだ。
牝馬であることによる斤量条件も含め、馬格、走法、脚質、展開、当日の馬場など複数の条件がかみ合えば、日本国内のGⅠタイトル数だけでは測れないパフォーマンスが生まれる。
この例もまた、「適性」という言葉の重要性を示している。
11.ビザンチンドリーム5着が教えたこと
2025年にはビザンチンドリームが5着に入った。
日本馬としては歴代でも上位に位置する好走である。
興味深いのは、欧州の競馬へ対応できることと、どんなロンシャンの馬場でも同じ能力を発揮できることは別だという点だ。
「欧州だから柔らかい芝に強ければいい」というほど単純ではない。柔らかさにも程度があり、馬によって最も走りやすい状態は違う。
凱旋門賞適性は「欧州適性」という一語だけでも説明しきれないのである。
12.2026年アドマイヤテラの敗戦から見えるもの
今年のアドマイヤテラの敗戦も、適性を考える材料になる。
レース後、陣営からは位置取りそのものよりも、ペースが遅く、最後に速い脚を求められる展開になったことを指摘する声が聞かれた。
つまり「ロンシャン=スタミナ勝負」と決めつけることもできない。
2026年は重馬場だった。それでもレースの流れ次第では、最後に加速力を要求される。
重い馬場への対応力だけでは足りない。
そのうえで展開に対応し、必要なら瞬時に加速できることまで求められる。凱旋門賞が難しいのは、要求される能力が一種類ではないからだ。
13.「道悪に強い馬」を連れていけばいいのか
凱旋門賞で日本馬が苦戦すると、よく聞かれる提案がある。
「最初から道悪が得意な馬を連れていけばいい」
一理はある。
しかし、日本の重馬場適性とロンシャン適性を完全に同一視することはできない。
日本の競馬場で雨が降ったときの芝と欧州の芝コースでは、地盤、芝の性質、コース形態、起伏、レースの流れなど条件が異なる。
さらに凱旋門賞当日が必ず極端な道悪になるとも限らない。実際、パリロンシャン2400mでは2分24秒台のコースレコードも記録されている。
必要なのは単なる「道悪巧者」ではなく、馬場状態の振れ幅に対応できる馬なのかもしれない。
14.血統だけで“欧州適性”は判断できるのか
では、欧州色の濃い血統の馬を選べばいいのだろうか。
これも簡単ではない。
血統は確かに重要な材料である。父系、母系をたどれば、どのような距離や馬場で能力を発揮してきた一族なのかを見ることができる。
しかし競走馬は血統表だけで走るわけではない。
同じ父の産駒でも、馬格、フォーム、気性、得意距離は違う。同じ母から生まれたきょうだいでも、競走能力や得意条件が大きく異なることは珍しくない。
見るべきなのは――
血統
+ 馬体
+ 走法
+ 道悪実績
+ 坂への対応
+ 折り合い
+ 長く脚を使う能力
+ 海外環境への適応力
その総合評価ではないだろうか。
血統は重要なヒントではある。しかし、それだけでロンシャン適性を断定することはできない。
15.斤量――3歳馬という選択肢
もう一つ無視できないのが斤量だ。
2026年の凱旋門賞では、古馬牡馬のアドマイヤテラとメイショウタバルが59.5kgだったのに対し、3歳牡馬は56.5kg、3歳牝馬は55kgという設定だった。
古馬牡馬と3歳牝馬では4.5kgの差になる。
もちろん斤量だけで勝敗は決まらない。3歳秋という成長途上の時期に海外遠征を行う難しさもある。日本のクラシック路線との兼ね合いも無視できない。
それでも、凱旋門賞を最終目標として逆算するなら、「完成した古馬を連れていく」ことだけが選択肢ではない。
斤量面で有利な3歳時に挑戦することも、攻略を考えるうえで重要な戦略の一つになる。
16.現地前哨戦は本当に必要なのか
凱旋門賞挑戦では毎年のように議論になる。
「現地の前哨戦を使うべきか、それとも本番へ直行するべきか」
2026年のアドマイヤテラとメイショウタバルは、ともにフランスで前哨戦を使わず凱旋門賞へ直行した。
一方、過去には現地前哨戦を使った日本馬も数多い。
前哨戦を使えば、馬場やコースを実戦で経験できる。輸送後の状態を確認でき、現地のレースの流れも体験できる。
その反面、本番前に一度競馬をすることで疲労が残る可能性もある。限られた期間の中で、前哨戦と本番の二度にわたって状態を整える難しさも生まれる。
だから「前哨戦を使えば勝てる」というほど単純ではない。
17.長期滞在か直行か――正解が一つではない難しさ
ならば、エルコンドルパサーのように長期滞在すればいいのか。
これも万能の答えではない。
長期滞在には、環境へ順応できるという大きなメリットがある。気候、飼料、馬場、厩舎、輸送、現地での調教。それらを時間をかけて経験できる。
しかし、長期間日本を離れること自体がすべての馬にとって最善とは限らない。環境変化を気にする馬もいれば、日本で調整した方が状態を作りやすい馬もいる。
現地で一戦使って良化する馬もいれば、フレッシュな状態で本番へ向かった方が能力を発揮できる馬もいる。
大切なのは「日本馬にとって正しいローテーション」を一つ決めることではなく、その馬にとって正しいローテーションを見つけることなのだろう。
18.もし「凱旋門賞専用馬」を作るなら
ここで思考実験をしてみよう。
もし日本ダービーも、天皇賞も、ジャパンカップも、有馬記念も考えず、最初から「凱旋門賞を勝つことだけ」を目的として馬を選ぶとしたら、どんなタイプになるだろうか。
まず2400mをこなせること。
ただし、単なるスタミナ型では足りない。スローペースになれば最後の加速力も必要になる。
柔らかい芝を苦にしないこと。しかし極端な道悪専用馬でも困る。
坂を苦にせず、下りでもバランスを崩さず、馬群の中でも力まず走れること。そして瞬発力だけでなく、長い時間にわたって脚を使えること。
仮想「凱旋門賞向き日本馬」の条件
① 芝2400mで世界級の基礎能力がある
② 柔らかい馬場でもフォームが崩れない
③ 起伏への対応力が高い
④ 折り合いに不安がない
⑤ 瞬発力と持続力の両方を持つ
⑥ 馬群を苦にしない
⑦ 海外輸送でもコンディションを維持できる
⑧ 斤量条件を含め、有利な時期を選択できる
⑨ 欧州の競馬へ順応できる精神面を持つ
こうして並べてみると、面白いことに気づく。
必要なのは単に「日本で最も速い馬」ではないのである。
19.日本最強馬ではなく「ロンシャン最強馬」を探す
これまで日本競馬は、ある意味で当然の発想で凱旋門賞へ挑んできた。
日本で強い馬が現れる。
ダービーを勝つ。宝塚記念を勝つ。GⅠを何勝もする。
そして、「この馬なら凱旋門賞へ」となる。
もちろん、それは間違いではない。世界最高峰の競走へ挑む以上、絶対的な競走能力は必要だからだ。
しかし過去の結果を見ると、別の選び方も見えてくる。
エルコンドルパサー――2着
ナカヤマフェスタ――2着
オルフェーヴル――2着、2着
スルーセブンシーズ――4着
ビザンチンドリーム――5着
日本国内での実績はそれぞれ違う。それでもロンシャンで高いパフォーマンスを見せた。
もしかすると、凱旋門賞攻略で最初に探すべきなのは
「日本最強馬」ではなく、
「日本馬の中で最もロンシャンに向いている馬」なのかもしれない。
そして、その馬が日本最強級の絶対能力まで備えていたとき、二つの条件が初めて重なる。そこに日本馬初制覇への大きな可能性があるのではないだろうか。
20.凱旋門賞を勝つ日は本当に来るのか
1969年、スピードシンボリが初めて凱旋門賞へ挑戦してから、日本競馬は何度もロンシャンへ向かった。
エルコンドルパサーは2着。
ナカヤマフェスタも2着。
オルフェーヴルは二度2着になった。
スルーセブンシーズは4着。2025年にはビザンチンドリームが5着。そして2026年、アドマイヤテラとメイショウタバルが再び挑み、11着と14着に終わった。
こうして歴史を並べれば、「また負けた」と感じるのも無理はない。
だが、50年以上勝てていないことと、50年以上何も分かっていないことは同じではない。
長期滞在で結果を出した馬がいた。
日本国内で絶対的な実績を持っていなくても好走した馬がいた。
歴史的名馬が世界の頂点まであとわずかに迫ったこともあった。
直行でも、前哨戦を使っても、成功例と失敗例がある。良馬場でも重馬場でも競馬は行われ、展開も毎年違う。
だから凱旋門賞には「この条件を満たせば勝てる」という単純な攻略法が存在しない。
そこが、このレースの恐ろしさであり、同時に日本競馬が挑み続ける魅力でもある。
日本ダービーを勝てる馬と、
凱旋門賞を勝てる馬は、
本当に同じなのだろうか。
これからの日本競馬に必要なのは、「最強馬が出たから凱旋門賞へ行こう」という発想だけではないのかもしれない。
2歳、3歳の段階から走法を見る。馬場適性を見る。坂への対応を見る。血統を見る。気性を見る。輸送への対応を見る。そして、その馬がロンシャンを走る姿を想像する。
「日本で一番強くなったから挑戦する」のではなく、「この馬ならロンシャンで一番強く走れるかもしれないから挑戦する」。
その発想へ変わったとき、日本の凱旋門賞挑戦はまた一段階進むのではないだろうか。
日本馬はまだ凱旋門賞を勝っていない。
しかし、勝利までまったく届いていないわけでもない。
必要なのは「日本最強馬」ではなく、
日本最強級の能力を持った
「ロンシャン適性馬」なのかもしれない。
いつか日本馬が凱旋門賞のゴールを先頭で駆け抜けたとき、振り返れば、これまでの敗戦もすべて無駄ではなかったと分かるはずだ。
エルコンドルパサーの2着も、オルフェーヴルの惜敗も、そして今年の11着と14着も――それぞれが「日本馬に何が必要なのか」を探すための長い挑戦の一部なのである。
主な参考資料
・JRA「2026年凱旋門賞 レース結果」――2026年の着順、負担重量、馬場状態、勝ち時計など。
・JRA「2026年凱旋門賞 レース概要」――凱旋門賞の歴史、日本調教馬の挑戦史など。
・JRA「パリロンシャン競馬場」――2400mコースの高低差、勾配、直線距離、コースレコードなど。
・JRA「2023年 JRA所属馬海外遠征の記録」――スルーセブンシーズの凱旋門賞4着など。
・JRA「2025年凱旋門賞 レース結果」――ビザンチンドリーム5着など。
・France Galop――フランス競馬および凱旋門賞関連情報。








