競馬コラム
目次
今年のオールカマーをどう見るか
秋の中山開催を代表する古馬重賞、オールカマー。今年は昨年の覇者レガレイラが再びこの舞台から秋を始動する。
ホープフルS、有馬記念、エリザベス女王杯とGⅠ3勝。実績だけを比較すれば、このメンバーでレガレイラが一枚上であることに異論はないだろう。
しかも昨年のオールカマー勝ち馬。中山そのものにも高い実績を持っている。
しかし今年のポイントは、「レガレイラが強いかどうか」だけではない。
対するコスモキュランダも中山では皐月賞2着、有馬記念2着など重賞で何度も好走してきた生粋の中山巧者。前走の宝塚記念では逃げる競馬から4着に粘り、GⅠでも通用する地力を改めて示した。
さらに京都新聞杯と京都記念を制しているジューンテイク、中山牝馬Sを勝ったエセルフリーダ、同じ中山2200mで勝利実績を持つキャントウェイトとパンジャもいる。
一見すると実績上位馬が明確な組み合わせだが、コース適性まで含めると意外に奥行きのあるメンバー構成となった。
中山芝2200mは「直線だけ」では間に合わない
オールカマーを考えるうえで、まず押さえておきたいのが中山芝2200m外回りという舞台だ。
スタート地点は直線入口付近。スタート後すぐにスタンド前の急坂を上り、1コーナーへ向かう。そこから外回りへ入り、2コーナー以降は下り勾配が続く。
この「下り」が重要になる。
向正面から自然とスピードが乗りやすく、後方の馬も3~4コーナーを待たず早めに動き始めることがある。最後の直線は310mしかなく、東京のように直線へ向いてから瞬発力だけで全部を差し切る競馬にはなりにくい。
そしてゴール前には高低差2.2mの急坂が待つ。
つまり求められるのは「一瞬だけ速く走る能力」よりも、3コーナー付近から速度を維持し、最後の坂まで止まらない能力である。
早めに動けること。
長く脚を使えること。
最後の坂でも余力を残せること。
今年の有力馬には、この条件に適性を持つタイプが多い。それだけに能力だけでなく、どの位置から、どのタイミングで動くかが大きなポイントになる。
今年の展開を握る先行勢
今年はセイウンプラチナ、メイショウゲキリン、ヴーレヴーなど前で運べる馬が揃った。コスモキュランダも前走の宝塚記念ではハナを奪っている。
ただし、何が何でも逃げなければならない馬ばかりという構成ではない。
そのため序盤から激しい先行争いになるというより、最初の位置取りが決まれば一度流れが落ち着く可能性がある。
問題はそこからだ。
レガレイラを後ろに置いたまま直線勝負へ持ち込みたくない馬は当然いる。コスモキュランダ、ジューンテイクなど持続力型の有力馬が早めに動けば、残り800m前後からレースが大きく動くことも考えられる。
スローだから前残り、ハイペースだから差し――という単純な二択ではなく、「道中は落ち着いても後半が長い脚比べになる」という中山2200mらしい形をまず想定したい。
レガレイラ――連覇へ、舞台適性は疑いようがない
今年も中心に置くべき存在は、やはりレガレイラだ。
昨年のオールカマーでは中団から運び、直線でドゥラドーレスを退けて勝利。続くエリザベス女王杯も制し、GⅠ3勝目を挙げた。
今年初戦の宝塚記念は7着。着順だけなら物足りなく映るものの、重馬場で17番枠という条件だっただけに、今回の評価を大きく下げる材料にはしづらい。
何より中山適性が高い。
2歳時にはホープフルSを勝ち、3歳時には有馬記念を制覇。昨年のオールカマーも勝っている。急坂を苦にせず、直線の短さにも対応できるのはすでに結果が証明している。
5枠7番なら極端な外を回らされる心配も小さい。後ろへ下げ過ぎず、中団あたりから流れに乗れれば理想的だろう。
最大のポイントは秋初戦としてどこまで仕上がっているか。それでもコース、能力、実績の三点を総合すれば、今年も主役候補から外す理由は少ない。
コスモキュランダ――中山で再び本領発揮へ
レガレイラに対して最も真正面から勝負できるのがコスモキュランダだろう。
2024年の弥生賞ディープインパクト記念を勝ち、皐月賞2着。昨年末の有馬記念でも2着に入り、中山重賞ではすでに5度の馬券圏内がある。
前走の宝塚記念では従来とは違って逃げる競馬を選択。それでも直線まで粘って4着。勝ったメイショウタバルから0秒5差なら、内容としては十分評価できる。
この馬の強みは、早い段階から脚を使う競馬になっても簡単には止まらないところにある。
一瞬の切れ味だけを競うならレガレイラに分がある。しかし向正面から徐々にペースが上がり、3~4コーナーで各馬が動く消耗戦なら、コスモキュランダの持続力が生きてくる。
6枠9番。極端に外ではなく、自分から動くには悪くない位置だ。
レガレイラに瞬発力勝負をさせない競馬へ持ち込めるか。横山武史騎手がどのタイミングで動くかは、今年のオールカマー最大の見どころの一つになる。
ジューンテイク――GⅡ2勝馬を軽視できない
第三勢力の筆頭はジューンテイク。
京都新聞杯に加えて今年2月の京都記念を制しており、すでにGⅡ2勝。京都記念では後方待機ではなく好位から運び、最後までしっかり脚を使って勝ち切った。
その後は金鯱賞4着、香港のクイーンエリザベス2世C8着、宝塚記念8着。結果だけなら足踏みしているように映るが、春は国内外で強敵との戦いが続いていた。
今回はGⅡへの条件替わり。相手関係は明らかに楽になる。
そして京都記念と同じ2200mという距離も好材料。速い上がりだけに依存するタイプではなく、長く脚を使える点もオールカマー向きだ。
課題は初めての中山と8枠13番。過去10年では内寄りの枠がやや優勢なレースだけに、外を回り続ける形は避けたい。
58kgも背負うだけに楽な条件ではないが、地力を考えればレガレイラ、コスモキュランダの二頭だけで決まると考えるのは早い。
エセルフリーダ――中山巧者が一気に壁を越えるか
実績馬に割って入る存在として面白いのがエセルフリーダだ。
前走の中山牝馬Sでは好位から運んで重賞初制覇。これでキャリア5勝のうち4勝が中山となった。
中山適性という点だけなら、レガレイラやコスモキュランダにも引けを取らない。
特に魅力なのは、前のポジションを無理なく確保できること。中山2200mでは後方一気より、好位から早めに動ける馬の方がレースを組み立てやすい。
一方で今回は相手が一気に強くなる。前走の牝馬限定GⅢから、GⅠ3勝馬や宝塚記念4着馬、GⅡ2勝馬との対戦である。
さらに8枠12番。内でロスなく立ち回る競馬はしづらい。
それでも55kgで出走できる点は魅力。中山巧者という武器をどこまで上位勢にぶつけられるか、今後のGⅠ戦線を占う意味でも注目したい一頭だ。
キャントウェイトとパンジャ――同舞台実績が不気味
人気上位馬以外で特に気になるのがキャントウェイトとパンジャである。
キャントウェイトは前走のワールドオールスタージョッキーズ第2戦を勝ってオープン入り。重賞初挑戦となるが、中山芝2200mでは過去に勝利実績がある。
そして今回は1枠1番。
過去10年のオールカマーでは1~4枠が連対馬20頭中14頭を占めており、内枠は明確に意識しておきたい条件。ロスなく脚をためられれば、格上挑戦でも簡単には切れない。
パンジャも面白い。前走はまさに今回と同じ中山芝2200mのサンシャインS。後方から長く脚を使って差し切り、オープン入りを果たした。
父はゴールドシップ。瞬間的な加速より、早めにエンジンをかけて長く脚を使う形に持ち味がある。
両馬ともGⅠ級の実績馬とは能力比較で見劣る。それでも「この舞台でどう走ればいいか」をすでに結果で示している点は軽視できない。
ヴーレヴー、リビアングラスにも浮上余地
ヴーレヴーは今年の夏に大きく流れを変えた一頭だ。
7月の巴賞を勝ち、続くクイーンSでは2番手から運んで3着。勝ち馬との差はわずか0秒1だった。
4枠4番なら今回も先行しやすい。過去10年で4歳馬は6勝を挙げ、3着内率46.2%と年齢別では最も高い数字を残している点も目を引く。
ただし今回は初の2200m。1800mから一気に400m延長されるため、3~4コーナーからロングスパートになった時に最後まで脚を残せるかが課題となる。
対照的に、距離実績で魅力があるのがリビアングラス。
京都新聞杯3着、京都記念2着など芝2200mの重賞で好走経験があり、3歳時には菊花賞4着。スタミナと持続力には確かな裏付けがある。
今年春の成績はもうひとつだったが、今回は夏を休養に充てての復帰戦。3枠3番を生かして前々で流れに乗れれば、近走成績だけでは測れない怖さがある。
伏兵勢が入り込む条件
残るアスクドゥポルテ、メイショウゲキリン、コスモブッドレア、セイウンプラチナ、ワイドエンペラーは、近走成績だけを見れば強調材料は多くない。
アスクドゥポルテは近3走が6着、12着、12着。まずは近走からの変わり身が必要になる。
メイショウゲキリンは今年2月に京都芝2200mの八坂Sを逃げ切っており、芝へ戻る点は注目。ただしその後は障害戦を2度使われており、久々の平地重賞でどこまで対応できるか。
セイウンプラチナは2025年2月以来、約1年7か月ぶりの実戦。コスモブッドレアもオープン入り後は苦戦が続いている。
ワイドエンペラーは昨年のオールカマーで7着。今年は8歳となったが、2枠2番にC.ルメール騎手という組み合わせ。展開を決め打ちして内で脚を温存できれば、着順を上げる余地は残る。
ただ、過去10年では7歳以上の馬は合計25頭が出走して3着が一度だけ。年齢データまで考えれば、基本的には4~6歳勢を上位に取るのが自然だろう。
データから見える今年の構図
過去10年のオールカマーには、今年のメンバーを考えるうえで興味深い傾向がいくつかある。
過去10年の主な傾向
・3着以内30頭中23頭が5番人気以内
・1番人気は4勝、3着内率60.0%
・4歳馬は6勝、3着内率46.2%
・5歳馬は4勝、3着内率25.5%
・3着以内30頭中29頭が6歳以下
・連対馬20頭中14頭が1~4枠
・前走GⅠ組は6勝、3着内率35.1%
・前走GⅠ・GⅡ組で3着以内30頭中20頭
このデータに今年の出走馬を当てはめると、やはりレガレイラとコスモキュランダの存在感は大きい。
ともに5歳で、前走は宝塚記念。レガレイラは昨年の同レース勝ち、コスモキュランダも中山重賞で豊富な実績を持つ。
ジューンテイクも前走宝塚記念というローテーションは強調できるが、8枠13番と58kgがポイントになる。
データ面で面白いのは4歳ヴーレヴーと1枠1番キャントウェイト。格では上位馬に及ばなくても、年齢や枠順という別の角度から浮上する余地がある。
ただしデータはあくまで過去の集計であり、今年のレースそのものを走るのは13頭。最終的には能力、コース適性、展開を組み合わせて判断したい。
最終展望――中心はレガレイラとコスモキュランダ
今年のオールカマーを考えると、中心となるのはやはりレガレイラとコスモキュランダだ。
レガレイラにはGⅠ3勝という絶対的な実績があり、昨年のオールカマーを含め中山重賞で何度も能力を証明している。舞台替わりによるマイナスはほとんどない。
対するコスモキュランダも、中山でこそ最大限に持続力を発揮するタイプ。前走宝塚記念4着の内容まで考えれば、単なる「相手候補」に収める必要はない。
レガレイラの末脚か。
コスモキュランダの持続力か。
それとも、その二頭が動いた後ろから第三の馬が現れるのか。
第三勢力ではジューンテイク。GⅡ2勝の実績は今回のメンバーでも上位で、2200mへの適性にも不安がない。初中山と外枠を克服できれば勝ち負けまで届いていい。
そこへ中山5戦4勝のエセルフリーダ。前走で重賞を勝った勢いがあり、55kgで出走できるのも魅力だ。
さらに穴を探すなら、1枠1番を引いたキャントウェイト、同舞台のサンシャインSを勝ったパンジャ、芝2200m重賞で複数回好走しているリビアングラスまで視野に入れたい。
現時点での注目グループ
中心:レガレイラ、コスモキュランダ
逆転候補:ジューンテイク
上昇・適性組:エセルフリーダ、キャントウェイト、パンジャ
展開次第で警戒:ヴーレヴー、リビアングラス
今年は極端な多頭数ではない。それだけに大外を回しても何とかなると考えるより、各馬が早めに好位置を確保し、向正面からの仕掛けに備える競馬になりそうだ。
そしてレースの形を最も大きく変えるのは、おそらくコスモキュランダの動きだろう。
宝塚記念のように積極的に前へ行くのか。それとも好位で脚を温存し、3コーナーから早めに動くのか。コスモキュランダがレガレイラより先に仕掛ければ、レースは長い持続力勝負へ傾く。
そうなればジューンテイク、パンジャ、リビアングラスのような長く脚を使える馬にもチャンスが広がる。一方で前半から流れれば、レガレイラの地力と末脚が最後にものをいう。
秋のGⅠへ向けた始動戦であると同時に、「中山巧者は誰なのか」を改めて問う2200m戦。実績最上位の女王が連覇を果たすのか、中山を得意とするライバルがそれを阻むのか。秋競馬の本格化を告げる一戦として、今年も見逃せないオールカマーとなりそうだ。
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